PINK盤(SD 2-802)

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PINK盤について紹介しましょう

At Fillmore Eastの原点、ピンク盤(CAPRICORN SD 2-802)です。ここからすべてが始まります。

オリジナルと言われるピンク盤との出会い

 
 長い長い間、At Fillmore Eastは私に取っては国内盤の「フィルモア・イースト・ライブ」として認識されていました。ジャケットの写真は黒くつぶれていて、メンバーの顔もあまり克明には見えませんでした。それでもその雰囲気からは、お子様向けのロックではない、何か特別な雰囲気を感じ取ったものです。
 そんな「フィルモア・イースト・ライブ」のオリジナル盤が米国Atco  Atlanticレーベルの SD 2-802、通称ピンク盤と知ったのは出会いから30年近くも経った頃でした。ひょんなことから再び針をこのレコードに落とすようになったのですが、どうやらオリジナルはめっぽう音が良いらしい、という話があったのです。いや、別にこの話はAt Fillmore Eastに限ったことではなく、ジャズの世界でのオリジナル盤信奉というか、1stプレス盤にはプレミアムの価格がつけられたりしていましたから(私はジャズも聴きます)、まあそんなものだろうな、とは思っていました。
 ですから、せっかく聴き直すならオリジナルで、と思ったのは当然の成り行きであったでしょう。それにAt Fillmore Eastはメジャー盤なので発売枚数も多いはず。そんなわけで最初の一枚は中古盤屋でみつけました。値段は2000円程度でした。
 
ピンク盤全部.JPG 

ビギナーズ・ラックというか、出会い頭の衝撃

 
 別段期待はしていなかったのです。それまでの国内盤だって別に気に入らなかったわけではなかったし。最初に針を落としたのはDISC-2のSIDE-2「You Don't Love Me」でした。この曲が好きなので最初に聴いたまでです。選曲に深い理由はありませんでした。
 
 こんなに違うものとは思いませんでした。例えば、コンサート会場の観客動員数が違う、そんな感じ。それからドライブ感が違う。根本的にペースの音が違う。そうか、ベリー・オークレーがリズムの底を作っていたのか、とか、ディッキー・ベッツってやっぱりリード・ギターだよな、とか、単に音が良いというだけではなくて、バンドが何を目指してどこに向かおうとしているのか、というようなことが手に取って分かるような音だったのです。これは衝撃でした。デュアンは? デュアンに関しては、音がどうであれデュアンはデュアンである、ということを確認しました(音質に付いては別項で詳しく述べます)。

本当の1stプレスはどこにある?

 
 ここでやめておけば良かったのです。だって十分に良い音だったし、不満があったわけではなかったのです。ただ、そういうことを気にしていないつもりでも、中途半端なアナログ・レコードの知識が耳元でこう囁くのです。「これ、本当の1stプレスならもっと良い音かも?」って。
 
 知ってはいても確認したことってなかったのです。盤面のマトリクスの刻印。数字の呪文がある時は活字(?)で、またある時は手書きで盤面のrun-offと言われるブランクの部分に刻まれていることぐらいの認識はありました。でも、まじまじと見たことはなかった。 

ST-CAP-712223 CCC -1

 これが何を意味するか、その時は全く分からなかったのですが、しばらくするとST-CAP-712223がレコード原盤番号を示し、CCC-1が世間で言うマトリクスというやつであることぐらいは分かってきました。ここで中途半端な知識がこう囁きます。「本当の1stプレスはA-1とかじゃないのか?」
 最初に出会ったCCC-1というマトリクスがすべてでした。A-1とかB-1とかあるのか。調べても分かりません。さあ、押さえきれない好奇心がむくむくと湧いてきました。自分で探し出すしかない。でも現実はそんなに簡単に進みません。寄り道したり無駄骨を折ったりしているうちに、左の写真のように検証のためのピンク盤が積まれて行ったわけです(この写真、全部ピンク盤です)。

嗚呼、ピンク盤よ…とりあえず分かった(つもりの)マトリクスの謎 - その1

これが最初に手に入れたピンク盤のレーベルです。

 これが初めて手に入れたビンク盤のレーベルです。1971年の1年間のみ使用されたもののようですが、派手ですねー、文字通り鮮やかなピンク色をしています。
 そしてここから色々なものを読み取って行く作業が始まります。

SD2-802-ccc(RI).jpgIMG_2268.JPG 

 
 
 左下の写真から、盤面の刻印がうっすらと見えるでしょうか? これがマニアの間でマトリクスと言われる部分です。手書きの刻印でST-CAP-712223 CCC-1と読み取れたらお慰みです。
 
 さて、実際には一枚だけが手許にあったところで何も分かりません。調査は対比から始まります。そこで止むなくというか、当然というか、ひたすらピンク盤を集めることが始まりました。
 ところでこのレーベルから何をどう読み取るかというところからこの話をスタートさせましょう。まずレーベルにはこういう順序でいくつかの事柄が記されています。
 

  1. レーベルロゴ
  2. カタログ番号
  3. アルバムタイトル
  4. 曲目
  5. 原盤番号
  6. 配給会社/住所

そして盤面には
 
  7.原盤番号他の刻印(いわゆるマトリクス)
 
 ということになります。具体的にはこう書かれています。
 

  1. CAPRICORN
  2. SD 2-802
  3. THE ALLMAN BROTHERS BAND AT FILLMORE EAST
  4. STATESBORO BLUES (-以下省略-)
  5. (ST-CAP-712223 RI)
  6. DIST. BY ATCO. DIV. OF ATLANTIC RECORDING CORP., 1841 B' WAY, N.Y., N.Y.
  7. ST-CAP-712223 CCC-1 AT/GP

 
1から4までに関しては特に説明する必要はないでしょう。ここで問題になってくるのが5・6・7です。

結構いっぱいあるピンク盤


 5の原盤番号なのですが、前半分のアルファベットはプリフィックスと言うそうですが、普通に読むとST-CAPはSTEREOのCAPRICORNの頭文字だろうなあ、なんてことは読み取れますが、後半の数字712223に関しては盤面ごとに末尾の数字が3〜6に変化していますので、盤面ごとの固有番号であると考えて良いでしょう。問題はそのあとのアルファベットです。これは実はこのレコードをプレスしたプレス工場の略称であるということが分かりました。

 次に6の配給会社/住所ですが、この部分でレコードの配給会社の移り変わりと移転が分かるので、時間の経過が読み取れます。つまり同じピンク盤でも製作された時期が判別できるわけですね。とはいうものの、これを実証するには色々なレコードの物証や資料調査などの裏付けが欠かせないのですけども。

 最後に7の原盤番号刻印ですが、固有番号の後には大抵の場合ラッカー盤(カッティング・マスター)が作られたジェネレーションが記号化されて刻まれているわけです。この順番の表記はレコード会社によって異なりますし、そこまでの詳しい知識は持ち合わせていませんので、ここでは触れません。というか解説できません。

 ただし、一般的にはこのジェネレーションが若いほど音が良いとされているので、たとえばCよりB、BよりAというように、コレクターは若い記号や数字の刻印に血道を上げるわけです。しかし自分の場合、CCCより若いBやAの存在をうかつにも想像してしまったのがことの発端ですから、他人のことをとやかく言う資格はありませんね。

 ちなみにこの刻印の最後のAT/GPというのはマスターをカッティングしたエンジニアの名前です。この場合はAT=Atlantic StudiosでGPは名匠George Piros氏を意味します。もちろんこの他にもレコードの盤面にはいろいろと刻まれていますが、これ以上は良くわかりませんし、まあ本題とはあまり関係ないのでこれ以上触れないでおきます。

プレス工場にもいろいろあります


 話があちこちにいきましたが、これらの組み合わせによって実際にはいろんな種類のピンク盤が世に出たわけです。例えば23枚の手許のピンク盤からプレス工場だけでも6種類が見つかりました(右上の写真を見て下さい)。


マトリクス写真改訂版.jpg 上から

  • ST-CAP-712223 MO
  • ST-CAP-712223 SP
  • ST-CAP-712223 RI
  • ST-CAP-712223 PR
  • ST-CAP-712223 SH
  • ST-CAP-712223 CTH
  • MO=Monarch Records, Los Angeles, CA
  • SP=Specialty Records, Olyphant, PA
  • RI=Philips Recording Corp. , Richmond, IN
  • PR=Presswell Records, Ancora, NJ
  • SH=Shelly Products, Huntington Station, NY
  • CTH=Columbia Record Productions, Terre Haute, IN

というようになります(順不同です)。西海岸から東海岸まで広範囲で作成されたことが分かりますね。さてはて、プレス工場で音は違うのでしょうか? それとも何も関係ないのでしょうか? 集めるまではそんなことは考えもしませんでした。

ジェネレーションとの関係やいかに?


 プレス工場の話から入ってしまいましたが、ところで皆さんはマトリクスのジェネレーションの話はどこへ行ったのか? と言う疑問が残りませんか。プレス工場とマトリクスの刻印と何か関係があるのか?って。実は自分も最初は刻印の判読から攻めたのです。スタートとなった「CCC-1」より若いマトリクスの刻印は本当にあるのか? と考えるところから始めたのですから、実際にも最初はそれを調べてみたのです。というかこつこつとピンク盤を買い集めては、その盤面をひたすら眺め続けたわけです。
 これまた少しぐらい集めたって何も見えてきません。森が深くなるだけでした。でも、数は力です。集まってみるとおぼろげだった輪郭が、少しずつですが、わずかに、ぼんやりと見えてきたのでした。

※補足: 原盤番号の読み方


 あらためて調べたところ、Atlanticの原盤番号の読み方のルールが分かりました。ほとんど上述の通りなのですが、ST-CAP-712223 PRを例にしてもう一度以下にまとめておきます。

   ST = stereo
   CAP = Caplicorn
   71 = 1971, マスター・テープがプレス工場に届いた年度
   2223 = マスター・テープの固有番号(盤面ごと)
   PR = プレス工場…Presswell Records Mfg. Co., Ancora, NJ   

(2015年9月28日)

プレス工場と刻印とその他もろもろの関係…とりあえず分かった(つもりの)マトリクスの謎 - その2

探せど出てくるのは「D」だの「F」だのばかりでした。

 
 最初に手に入れたピンク盤のマトリクスの刻印がST-CAP-712223 CCC-1(DISC-1のSIDE-1です)であったことは既に述べました。問題はこれより若いジェネレーションの刻印が見つかるかどうかです。有るのか無いのかさえ分かりません。Fillmoreに関してそんなことを調べた文献も、またネット上にもそんな情報はありませんでした。他の有名ロックミュージシャンのアルバムならば、そんな話もたまに聴きますが、ともかくFillmoreな関しての情報がありません。
 

IMG_2270.JPG 

ということは、地道にこつこつと探すしかないのです。しかし有るということは物証で証明できても、無いというのは証明できません。いずれにせよできることは事実の積み重ねと、事実の積み重ねによる類推でしかありません。かくして自宅のレコード棚は真っ黒けになって行きました(上の写真を見て下さい・笑)。
 ピンク盤を集める過程で、本来のピンク盤以外のFillmoreにも当然目がいきますから、思いもかけないような国のFillmoreも手許に集まります。
  でもみんなモノクロジャケットなので、いろんな国のジャケット

の背表紙が並んでもすべてモノクロでした。だから棚に入れてしまうとなかなかお目当てが見つからなくなります。おっと、脱線しましたね。話をピンク盤に戻しましょう。

森を見て木を見ない姿勢

 
 最初は一枚ごとの刻印を見ては一喜一憂でした。まず最初の発見は「C」とか「D」とか「E」というアルファベット1文字の刻印を見つけたことです。さらにCCC以外に存在するCを、CCCの若いジェネレーションであると単純に考えたのです。ただ実際には「C」は極めてまれで、やたら「D」だの「F」だのが溜まって行くばかりでした。これはちょっと違うのかな、そんな気が漠然としてきました。
 
 そんなある日、ようやくのことプロモ盤を手に入れることができました。こういうのはタイミングで、出会う時はすんなり出会いますが、自分の場合にはちょっと時間がかかりました。マトリクスはSAT-CAP-712223 PRです。
 もうこの時点ではマトリクス刻印の末尾に「A」が有るとは考えにくくなっていました。はたしてこのプロモ盤のマトリクスはというと「C」でした。これで少しほっとした記憶が有ります。 
 
 しかし時には、ごくまれにですがアルファベット1文字シリーズに混じってチラホラ別の刻印のものもあるのです。それはCCCの流れを組むような「DDD」とか「EEE」の刻印が刻まれたものです。つまり次の大きな二つの流れが手許に揃い始めたことに気づきました。
 

  1. C→D→E→F
  2. CCC→DDD→EEE

 そこそこ集まってきて見えてきたものが有ります。これはどうも木を見ていては森はなかなか見えてこないと言うことです。もともとマトリクスについての詳しい知識も無いし、レーベルについても調べたことが無いのです。ならば一枚ずつの検討はちょっと棚上げして、一つ森を作れば見えてくるものが有るのではないかと。
 
 もっともそんな気分になったのも、何年ものうちにこつこつと集めたピンク盤が森とは言わずとも、我が家のレコード棚の一角を占めるようになったからかもしれません(ところで現時点では「C」と「CCC」の間の「CC」というマトリクスの存在は確認できていません。DDとEEはありますが)。気がつけばピンク盤も23セットになりました。そろそろ整理の時を迎えたようです。ということで、以下に例のプレス工場との関連性を柱にして表にしてみました。

※追加補足:CCが見つかりました(2008年6月1日)


 この記事を書いて以来、どこかにCC盤があるはずと探していました。実はCC盤の存在は、以前からレーベルの件でお世話になっているBuzzybeeさん より情報を頂いていました。BuzzyBeeさんのお持ちのFillmoreは2枚あり、一枚は4面ともCC-Re、もう一枚はDD-REPC・EE-REPC・FF-REPCの組み合わせであるということでした。どちらもMOプレスです。
 というわけで、CC-Reのもうひとつジェネレーションの低いCC盤は何処? と探していたのですが、MOプレスの白プロモ盤が発見されましたので早速購入してみました。ちよっとぼろい盤でしたが音質は二の次で(笑)、とにかくマトリクスの確認だけがしたかったわけです。

 結論を言うと「CC-Re」。「CC」は無かったわけですね。一回目ではうまく行かなかったのかな? そんなわけで晴れてマトリクスの謎(?)が解けました。めでたし、めでたし。うれしついでにもう一枚新たにピンク盤を買ってしまいました。馬鹿ですね(笑)。これはSPプレスでした。これにてただ今ピンク盤は25枚になりました。やれやれ。ということで、以下の内容についても若干修正いたします。

ST-CAP-71222X PR
 C  → D → E → F(計11セット) ※ただしすべての盤面のマトリクスが同じものはプロモ盤のみ。  その他は混在多し。  (PR=Presswell Records, Ancora, NJ)
ST-CAP-71222X SP
 C(計2セット)  (SP=Specialty Records, Olyphant, PA)
ST-CAP-71222X RI
 CCC → DDD → EEE(計7セット)  ※ただしCCCはCCC-1,CCC-1-1,CCC-1-11,CCC-1-111,CCC-1-1111,CCC+-1,CCC++-1,CCC+++1など枝番多し (RI=Philips Recording Corp. , Richmond, IN)
ST-CAP-71222X MO
 CC-Re → DD → EE(計3セット) (MO=Monarch Records, Los Angeles, CA) 
※ただしFF-REPC盤の存在確認済み
ST-CAP-71222X SH
 C(計1セット) (SH=Shelly Products, Huntington Station, NY)
ST-CAP-71222X CTH
 F(計1セット) (CTH=Columbia Record Productions, Terre Haute, IN)

(2008年6月1日現在)    マトリクスナンバーの71222Xという表記は712223〜712226の意味ですのでご了承ください。

※さらに東京・Nさんより上記以外の工場プレスのビンク盤情報をいただきました。ありがとうございました(2015年9月)

ST-CAP-71222X BW
 F (BW = Bestway Plastics, Mountainside NJ)

ひとつ山越しゃ、さらに山、山、山…とりあえず分かった(つもりの)マトリクスの謎 - その3

こんなこと当り前なのかもしれません

 
 At FillmoreEastはピンク盤がオリジナルであるという、たったそういう一言によって、なんだか分けも分からずここまで引っ張られてきてしまいました。知識の有る人、いわゆるコレクター、マニアと言われる人にはあたり前のことばかりかもしれません。なーんだ、そんな話なのか、なんて。あるいはもっと簡単に謎解きができるんでしょうね。
 
 それとは反対に自分のように知識の無い人間には、調べれば調べるほど分からないことが増えて行くだけです。それに第一、自分が何を調べていたのか分からなくなる…(笑)。
 
 ただ自分は、次は何が出るかな? 次は何だろう? とガチャボンの丸いプラスティックの玉を開けて一喜一憂する子供のような気分で、ピンク盤の一枚一枚に関わってきました。これはこれで楽しかった! もちろん楽しかったから、まだ続いているんですけどね。だからこの話に終わりは無いんです。 

どれが一番若いのか? 配給会社/住所表記の出番か?

 
 そうそう、C、(幻のCC)、CCCのいずれが若いジェネレーションなのか、という問題が残っていましたね。今度は別の切り口で見て行かなければなりません。なかなかにピンク盤一枚で骨が折れます。こういうのは仲間なんかとわいわいやりながら、ああでも無いこうでも無いと言っているのは楽しいですが、筋道たてて検証して行くのはまるで仕事です。
  盤面刻印の調べ方というのがおそらく有るのでしょうが、残念ながら詳しくないので、まずはレーベル上で読み取れるものから、また例によってとつひとつ検証して行くことにしました。
 

 ここでも活躍するのはプレス工場とマトリクス末尾のアルファベットであることに変わりがないのですが、そこにもうひとつここで判断材料として加わってきたのが配給先/住所表記です。たいていのレコードではレーベルの円周に沿って小さな字で書かれています。ビンク盤の場合にはレーベル最底辺部に円弧状に印字されています。

あるのか? 配給会社と住所とマトリクスとプレス工場の関係

 
 20余枚のピンク盤のレーベルを見て行くと、どうやら4種類になるようでした。
 
 1…DIST. BY ATCO, DIV. OF ATLANTIC RECORDING 
    CORP., 1841 B'WAY. N.Y., N.Y.
 
   2…DIST. BY ATLANTIC RECORDING CORP., 
    1841 B'WAY. N.Y., N.Y. 
 
 3…DIST. BY ATLANTIC RECORDING CORPORATION, 
    1841 BROADWAY, NEW YORK NEW YORK 10023
 
 4…DIST. BY ATLANTIC RECORDING CORP., 
    75 ROCKEFELLER PLAZA, N.Y., N.Y.  
 
 さてこの四つの配給会社/住所表記が、先に調べたジェネレーションを示す盤面刻印末尾のアルファベットとプレス工場の組み合わせに、何かルールなり法則のようなものはあるのでしょうか? そこから何か見えてくるものはあるのでしょうか? 
 
 ということで、また例によってしばらく似たような写真ばかりが続きますが、何事も検証のためです。比較有っての実証です。どうぞ平にご容赦のほどを。 

DIST. BY ATCO, DIV. OF ATLANTIC RECORDING CORP., 1841 B'WAY. N.Y., N.Y.

SD 2-802promoラベル.jpg1.プロモ盤 ST-CAT-712223 PR




MO_PROMOラベル.jpg2.プロモ盤 ST-CAT-712223 MO



レーベル.jpg3.プロモ盤 ST-CAT-712223 RI ※RIのプロモはピンクレーベルです



ATLANTIC PRラベル.jpg4. ST-CAT-712223 PR


SD2-802-ccc(RI).jpg5. ST-CAT-712223 RI



MOラベルDD.jpg6. ST-CAT-712223 MO





SH_atcob'way.jpg7. ST-CAT-712223 SH

DIST. BY ATLANTIC RECORDING CORP.,
1841 BROADWAY. N.Y., N.Y.

PRラベルD-F.jpg 1. ST-CAT-712223 PR
SP_PRラベル1.jpg 2. ST-CAT-712223 SP
ST-CAP-712223-BW.jpg 3. ST-CAT-712223 BW

DIST. BY ATLANTIC RECORDING CORPORATION, 1841 BROADWAY, NEW YORK
NEW YORK 10023

RIラベルatlantic.jpg 1. ST-CAT-712223 RI

DIST. BY ATLANTIC RECORDING CORP.,
75 ROCKEFELLER PLAZA, N.Y., N.Y.

SHラベル.jpg1. ST-CAT-712223 SH
CTHラベル.jpg 2. ST-CAT-712223 CTH

ちょっと整理してみましょうか…とりあえず分かった(つもりの)マトリクスの謎 - その4

 上の写真を一覧表にまとめてみました。

工場略称
配給会社/住所表記
PR, RI. MO, SH
DIST. BY ATCO, DIV. OF ATLANTIC RECORDING CORP., 1841 B'WAY. N.Y., N.Y.
PR, SP, BW
DIST. BY ATLANTIC RECORDING CORP., 1841 BROADWAY. N.Y., N.Y.
RI
DIST. BY ATLANTIC RECORDING CORPORATION, 1841 BROADWAY, NEW YORK NEW YORK 10023
SH, CTH
DIST. BY ATLANTIC RECORDING CORP., 75 ROCKEFELLER PLAZA, N.Y., N.Y.

 ところで配給会社についてですが、一番最初のみATCOとなっています。ATCOはATLANTICの子会社のレーベルですが、それ以外はATCOが外れ直接ATLANTICの表記になっています。また上から三つは同じ住所表記です。
 ちなみに三番目の住所表記末尾の「10023」はNew York, New YorkのZip Code(郵便番号)です。一番下は1973年にATLANTICがオフィスを移転した先の住所のようです。ということは1973年以降に制作されたピンク盤ということで、ビンク盤としては最後期のものということが分かりますね。
 したがってSH,CTH盤がピンク盤としての終わりかな? と思ってマトリクス刻印の末尾を確認すると、CTH盤は「F」となっていて、なるほど、という感じですが、SH盤はなんと「C」、しかも実は上に紹介したレーベルの写真は表がATCO、裏がATLANTIC(しかも73年以降の75 ROCKEFELLER PLAZA)という状態。うーん、なんじゃこりゃ? しかしこのSH盤はちょっと分けありの感じが匂うぞ?!(これ、別建てで解説します)。

何がどう違う? どこをどう判断する? (追加修正しました)

 
 いろいろと並べ上げた割には、なんだかすっきりしませんが、何を検証したかったかというと、C→D→E→F、CC→DD→EE、CCC→DDD→EEE→FFFという流れは普通に理解できるのですが、よーくこのマトリクス末尾の刻印を見ると、例えばCCCはCに後から明らかにCCを書き足した形跡が有るため、ひょっとしたらC→CC→CCCという流れも有るかなと思ったのです。
 で、こういう時はマトリクスとにらめっこということに相成るのですが、よく見ると明らかにCにCを付け足してCC、CCを付け足してCCC、DにDを付け足してDD、DにDDを付け足してDDDというように読めます。

 
 ちなみに付け足した部分というのは線も細く溝も浅いです。しかもFillmoreの盤面のマトリクスはどの盤も手書きで刻まれていますから、簡単に筆跡鑑定ができます。写真だと分かりにくいかもしれませんが、例によって並べてましょう。
 サンプル例は、ST-CAP-712223/5C(プロモ盤)と、新たに発見された(といっても自分が知らなかっただけですが)ST-CAP-712223/5CC-Re(プロモ盤)と、ST-CAP-712223/5CCC-1です。
 チェックのポイントはもちろん文字が同じかどうかと、Run-offの幅・溝の走り具合です。まあここまでしなくても黙視で同一性は確認できますが、こういうのは念には念を入れた方が良いかと。そんなわけでご覧ください。 

↓下がプロモ盤のST-CAP-712223 Cです。
712223C.JPG
↓続いてプロモ盤ST-CAP-712223 CC-Reです。
712223CC.JPG
↓これを画像処理ソフトを使って重ねるとこうなります。
3CC.jpg

↓下がプロモ盤のST-CAP-712225 Cです。
712226C.JPG
↓続いてST-CAP-712225 CC-Reです。
712225CC.JPG
↓これまた画像処理ソフトを使って重ねるとこうなります。
5CC.jpg

↓今度はST-CAP-712223 CCCです。
712223CCC.JPG
CC-Reと同様に画像処理ソフトを使って重ねるとこうなります。
C.jpg

↓同じくST-CAP-712225 CCCです。
712226CCC.jpg
これまた画像処理ソフトを使って重ねるとこうなります。
CCC.jpg

 どちらもrun-offと言われる最後の音溝からレーベルまでのブランクの部分の幅もまったく一緒だということが分かります。というわけで、こんな風に考えられないでしょうか。

  • C   ⇒   D   ⇒   E  ⇒  F   
  • ↓       ↓      

  CC  ⇒   DD    ⇒   EE  ⇒  FF

  • ↓       ↓       ↓      
  • CCC   ⇒  DDD  ⇒  EEE     

 まあこんな回りくどいことをしなくても、レコードのマトリクスについて知識の有る方ならすぐに分かってしまうのでしょうし、ひょっとしたら自分は見当違いのことをしているのかもしれませんが、でもここまで述べてきた色々なことを考えあわせると、頭の中でこんな風になってしまいました。

 Cがすべてのスタート(最初のラッカーマスター)。
 で、C,CC,CCCはひとつのラッカーマスターから3つメタルマザーを作ったその順番、つまりCCCは3番目のメタルマザーという意味じゃないかと。で、もちろん実際にはCCC-1のようにこれらのマトリクスには枝番が付いているので、それがスタンパーの順番。
 で、Cのラッカーマスターが使えなくなったら、2版目のDをカッティングして新たなマスターを作り、次いで3版目にEを作り…というように繰り返された、と。

 違うかな? どうなんでしょ。分かりません。だってC/D/E/Fのピンク盤には枝番が一つもないんですよ。単純にC,D,E,Fとマトリクスの末尾に刻まれているだけ。run-offの部分は本当にマトリクスとマスタリング・エンジニアのサインだけで他には何も刻まれていません。だとしたらスタンパーの数はどうなるのだろう? まさかAgマスターから直接レコードを作ったとか? 誰か本当のことを教えてくれたらうれしいです。

けっきょく何が1stブレスだったのか?


 そうそう、目的はFillmoreの本当の1st盤を探そうということでしたね。何も手がかりの無い中、闇雲にピンク盤を買い漁ったり、このホームページにまとめるにあたって調べてみて分かったことは、けっきょく良くわからないということ。もちろんFillmoreの場合にはST-CAP-712223CCC-1というように枝分かれして行くので、それが最も少ないのが本当の1st、一番最初のピンク盤ということになるのですが、だとすると「ST-CAP-71222X C」ということになります。手許にあるプロモ盤は「C/C/C/C」ですが、ピンク盤は「C/C/D/D」しか持っていません。残念! でもねー、肝心なのは音ですよ、音! (後日見つけたので速攻で購入しました)

やっぱりビギナーズラックだった?!


 一番最初に買ったST-CAP-712223CCC-1、その音の良さに驚いて始まった1stプレス盤探しもそろそろおしまいのようです。というのも、マトリクスのジェネレーションに関係無く23枚のピンク盤を試聴して、一番良い音だったのが何のことは無いST-CAP-712223CCC-1だったからです。最初にすべてが有って、そのことを確認する長い長い旅でした。レコード集めというマニア的行為に初めて足を踏み入れたビギナーズ・ラックだったんでしょうか。ビギナーズ・ラックというのはこういう時に使う言葉じゃないかな? やれやれ、という気もしますけども(笑)。

 では、この話はこれぐらいにして、気分を変えてジャケットやロゴやインナースリーブなど、デザイン的な話に移しましょうか。こちらもこちらでいろいろあります。もちろん本来のプレス違いによる音質評価の話も残っていましたね。では、この話はひとまずここでおしまい。
 ただし、加筆訂正・修正は随時しますので、たまにはのぞいてみて下さい。 では、お次のページへどうぞ。

ちなみに簡単ですがレコードのできるまで

ラッカー・マスター
オリジナル・テープより再生された音が、カッティング・マシーンを経てラッカー盤に音溝が刻み込まれたすべてのスタートとなるレコード。ラッカー・マスターも消耗品ゆえ、最初に作られたラッカー盤が使えなくなると二版目、三版目とラッカー盤がカッティングされていくが、この時点では通常カッティングは初版の時とは別のエンジニアが行う。だから音が変わる?
Ag マスター
ラッカーマスターにメッキをかけて複製をとったもの。音溝が突出した(凸型)金属製のレコード。
メタル・マザー
Ag マスターにもう一度メッキをかけ同じ事を繰り返すと、マザーと呼ばれる金属製のラッカー盤の複製品(凹型)が出来る。実際のレコード製作の元。
スタンパー
メタル・マザーにもう一度メッキをかけ同じ工程を経て作られるのが、実際のレコードのプレスに使われるスタンパーと呼ばれる金型。1枚のスタンパーからは1000~2000枚のレコードがプレスされると言われている。

せっかくなので、PROMO盤の特集ページを作りました


 長い道のりでしたが、PR盤(C)、MO盤(CC-Re)、RI盤(CCC)のプロモーション盤が手許に揃いました。さらに縁あって長い間探し求めていたモノラル・プロモ盤を奇特な方からお借りすることができました。そこで、4枚のPROMO盤の特集ページを作りました。ここにしかない話もあります。ぜひごらん下さい。特集ページはこちらへ!

新種が出現?! なんだこれは… part1 謎のCTH盤現わる?!

これまでの流れと全然違うのが出てきました(2009,10,06)


 非常に有り難いことですが、このホームページを見て頂いていた現役ミュージシャンのKenさんよりBBSに書き込みが有りました。このホームページに出てこない種類のピンク盤が手元に有るというのです。どんな種類かというと、マトリクスの刻印が機械刻印だというのです。ご承知の通り、このページで紹介してきたマトリクスは全て手書き刻印です。手元に09.10.06現在で31枚のピンク盤が有るのですが、もちろん全部手書きですし、他の人の持っているものを見ても全部手書きのものでした。いやー、そんなものが有るなんて考えもしませんでした。しかも他にも色々と今までのものと異なる部分が有るのです。
 具体的には、原盤番号とSIDEの関係が大きく従来と違うのです。ちょっと整理してみましょう。
 まずピンク盤そのものの原盤番号はST-CAP-712223 CTHとありますから、Columbia Record Productions というプレス工場で生産されたものとだと判ります。さらに原盤番号とマトリクスについては以下の通りです。

DISC-1
   表 side-1 ST-CAP-712223 CTH
     刻印マト [ST-CAP-712223SP-1A]
   裏 side-4 ST-CAP-712226 CTH
     刻印マト ST-CAP-[712226]SP-1B
DISC-2
   表 side-2 ST-CAP-712224 CTH
     刻印マト [ST-CAP-712224SP-1A]
   裏 side-3 ST-CAP-712225 CTH
     刻印マト ST-CAP-[712225]SP-1A

となっているそうです([太字] が機械刻印、他が手書き刻印)。

普通は原盤番号/マトリクスがDiscの表裏順なのですが、このピンク盤はsideの順序通りになっており、マトリクス刻印もそれにリンクしています。


じゃあ、ちなみに自分の手持ちのCTH盤と比較してみましょう。

CTH-1.jpg

DISC-1 side-1 手書き刻印 ST-CAP-712223-F

続いてKenさん所有のものです。

20091003155747.jpg

DISC-1 side-1 機械刻印 ST-CAP-712223SP-1A

おいおい、SP-1Aって何だ????
従来のC→D→E→F という流れが完全に途切れています。

これって本当にピンク盤? でもピンク盤…


 うーん、悩んでいても仕方ないので、もう一度レーベルそのものを見直してみましょう。

CTH-2.jpg

 まずこのCTH盤の特徴はピンク盤はビンク盤でもサーモンピンクです。これはプレス時の加熱のせいなのか、紙質のせいなのか、はたまたインクのせいなのか諸説が有りますが、今回の話とは関係ないので割愛します。
 ポイントはST-CAP-712223 CTHと言う文字、そしてレーペル外周リムに印字されている住所表記です。
 DIST. BY ATLANTIC RECORDING CORP., 75 ROCKEFELLER PLAZA, N.Y., N.Y. ということですから1973年以降のものと判断できます。



 さっそくKenさんに頼んで、写真を送ってもらいました。さっそく手元のCTH盤のレーベルと比較してみましょう。

20091004204447.jpg

 いわゆるピンク盤そのもののレーペルですねえ。よく見ると、ST-CAP-712223 CTHではなく(ST-CAP-712223 CTH)というように括弧でくくられています。
 レーベル外周リムの住所表記ですが、
DIST. BY ATCO, DIV. OF ATLANTIC RECORDING CORP., 1841 B'WAY. N.Y., N.Y. となっています。これって最初期のものですが、レーペルの在庫に後から文字のスミ版だけ活版印刷されることは珍しくないのですが、気になるといえば気になります。
 そういえばバンド名・タイトル名の文字の書体も違います。

このCTH盤のマトリクスで判ること、判らないこと


 ちなみに肝心のマトリクスそのものの読み方ですが、従来のピンク盤のマトリクス刻印はレーベルに印字されているのとは違って末尾のプレス工場の略称は省かれていました。手持ちのCTH盤もこの例から漏れるものでは有りません。しかしこのCTH盤は盤面の刻印ST-CAP-712223 SP -1Aとあります。こういう表記は今のところこの盤だけです。では末尾の「SP」とは何か? と言う疑問が当然のごとく頭によぎります。これがレーベルの原盤番号ならば、迷わずプレス工場を意味する、ということになります。では「SP」と言う略称のプレス工場は有るのでしょうか? それがあるんですね。

SP=Specialty Records, Olyphant, PA

 もしそうだとすれば、カッティングをしたのがSPでプレスをしたのがCTHということなのか、あるいはカッティング/プレスがSPで、ラベルだけCTHのものを貼ったのか? (ちなみにもともと原盤番号にST-CAP-712223 SPというように最初からSPが付いたものがあります)
あるいはまったくプレス工場とは全く何の関係もないかもしれません。すべて推測なので、どの推論も確たる裏付けは有りません。

今のところこれ以上のことは判りません…現物を聴いてみたい!


 結論を言うとここまでの情報だけでは何も判りません。とにかく個体が少なすぎて判断材料が無いんです。ほとんど知識がなく、現物に当たって検証してきた当Fillmore And Moreですから、現物が無いと話になりません。それに肝心の音を聞いていません。いやはや、必ずや近いうちに現物を聴かせて頂きたいものです。
 ちなみに、判らないところをまとめてみると、

  1. 機械刻印   2. 原盤番号/マトリクスの順番    3. 印字の書体  4. レーベル元刷りの状態

 ということで、改めてこのテーマは追い続けますのが、今回はここまで。
 

補足1 : 有り難いことに、この後すぐにKenさんから実際のCTH盤をお借りして試聴する機会に恵まれました。
    さてはて肝心の音質はというと…ということで想像通りでした(笑)。Kenさん、ありがとうございました。

補足2 : さらに有り難いことに当HPのBBSにハンドルネームonbanjunkieさんより貴重な情報をいただきました。
    以前お持ちだったNeil Youngの「 Havest」, Jackson Browne の「1st」, Doobie Bros. の「Toulouse Street」などにも、
    上記のピンク盤と同様にオリジナルの手書きマトの他に機械刻印1Aがあったそうですが、それらはすべて通販のレコードクラブ・イ
    シュ―だったそうです。なるほど、通販も掘り出すと奥が深そうです。onbanjunkieさん、ありがとうございました(2014年10月)。

新種が出現?! なんだこれは… part2 謎のVSRP盤現わる?!

あれーっ? VSRPって何の略称?…(2009年10月8日)


 実はこのピンク盤については、今年の春頃にBBSの常連さんであるSTEVEさんより存在を知らされていました。上のCTH盤とは違いマトリクスは一般的なものだったのですが、問題はレーベル上の原盤番号の末尾のアルファベットによる略字でした。
 ということで、STEVEさんにお願いしてレコードそのものをお借りして検証することにしました。

 下の写真をご覧下さい。たしかにVRSPと言う文字がST-CAP-712223の後に印刷されています。レーペル外周リムに印字されている住所表記はDIST. BY ATLANTIC RECORDING CORP., 1841,BROADWAY, N.Y., N.Y. ということですから1972年頃のものと判断できます。

vsrp.jpg



VSRPラベル.jpg

VSRP盤のマトリクスやいかに?


 さて、肝心のマトリクスですが、今回お借りしたものは全面末尾が「F」でした。アルファベット1文字ということは、PR盤の流れを組むものです。



 ということで、手持ちの中からPRプレス盤で4面Fのものをさがしたところ、有りましたのでさっそく比較してみました。かなり癖のある手書き文字で認識しやすいので、今回は目視のみです。

↓下がVSRP盤のST-CAP-712223 Fです。
vsrp1.JPG
↓続いてVSRP盤ST-CAP-712224 Fです。
vsrp4.JPG
↓続いてVSRP盤ST-CAP-712225 Fです。
vsrp2.JPG
↓続いてVSRP盤ST-CAP-712226 Fです。
vsrp3.JPG



↓下がPR盤のST-CAP-712223 Fです。
pr1.JPG
↓続いてPR盤のST-CAP-712224 Fです。
vsrp4.JPG
↓続いてPR盤のST-CAP-712225 Fです。
pr2.JPG

↓続いてPR盤のST-CAP-712226 Fです。
pr3.JPG



                      
目視でもVSRP盤とPR盤は完全一致します


 画像編集して見るまでもなく、一目で同じマザーから起こされたスタンパーでプレスされたことが判りますね。ここまではっきりしていれば、PR盤と同じカッティングでほぼ同じジェネレーションであることは間違いないでしょう。

                      
音はまったくもってPR盤の「F」と同じでした


 ここまで一致していれば、想像通りの結果になるでしょうね。ということで試聴をしてみましたが、VSRP盤とPR盤の音は聴き比べてもほとんど差が判りませんでした。どんな音かって? マトリクス「F」の音がします(笑)。最初が「C」ですからそれでご判断を願います。

このVSRP盤のマトリクスで判ること、判らないこと


 上の各盤面のマトリクス刻印でも判ったように、SPプレスと同じマスターから作られたことは確かですし、そこから出てくる音も全く同じでしたから、まずこの事実は間違いないでしょう。
 問題はVSRPとは何を意味するか、ということにしぼられます。ちなみに原盤番号の末尾はプレス工場を示す略称ですが、今判っているAtlantic系のプレス工場コードは以下の通りです(アルファベット順)。

AM American Record Pressing, / AR Allied Records / BW Bestway Products
CL Columbia / CP Columbia Record Productions / CT, CTH Columbia Record Productions
LY Shelly Products / MG MGM Record Mfg. / MO Monarch Records
PL Plastic Products / PR Presswell Records / RI Philips Recording Corp.  
SO Sonic Recording Products / SP Specialty Records / WM Midwest Record Pressings

 この中にはVSRPって見つからないんですよねー。ということで、ネットで調べたりもしたのですが、今のところ手掛かりが有りません。もしどなたかご存知の方がいらっしゃったら、ぜひご一報を下さい。よろしくお願い致します。

新種が出現?! なんだこれは… part3 謎のSQBO盤現わる?!

またも新種登場! SQBOって何の略称?…(2010年12月)


 しかし本当にたくさんの種類が有って頭が痛くなります、ってか嬉しい限りなんですが(笑)、このピンク盤については、実は2010年の12月も末にアメリカ在住の○さんという方からご連絡が有り、細かな情報をいただいたものなのですが、ここにアップする逃す極遅くなってしまいました。○さん、本当にすみません。
 ということで、5年近く寝かしてあったネタですが、この5年近くの間に実は色々と調べてはいたんです。詳しくは後に譲るとしてレーベルを見てみましょう。

 下の写真を見ても分かる通り、明らかに他のピンク盤と違って、まずレーベルのリムに住所表記が一切無く、中央下に「Mfd by Capitol Records. Inc. U.S.A.」と印字されていますね。つまりCapitolでプレスされたものであるわけです。これが最大のポイントですね。しかしCapitolって…。

ラベルSQBO-93888.jpg



ラベルSQBO-93888.jpg

SQBO盤のマトリクスやいかに?


 続いておなじみのマトリクスですが、写真を送って頂きました。大きな手描き文字の刻印ですね。4面については以下の通りです。

  • Record 1 one = SQBO 1 93888 A1
  • Record 1 two = SQBO 2 93888 A1
  • Record 2 three = SQBO 3 93888 A1
  • Record 2 four = SQBO 4 93888 A1

 分かりやすいマトリクスですね。マスターからまったく別に製作された盤で、ラベルの元刷りの用紙だけピンクのものを流用したということなのでしょう。この様子を見ると、どうやら盤面は曲順になっているようです。


マトリクスSQBO-93888.jpg

ジャケットにも違いがあります…ほんの少しですけどね

  

ジャケットSQBQ-93888-2.jpg

ジャケット 裏 2.jpg裏ジャケ・右下にAtlanticのライセンスで販売されている、とあります

ジャケット 背中 2.jpgジャケット背、上から2/3のところに"93888"と印字されています

SQBOとは何か?…Capitol Record Club (通販)のイシューでした


 こちらに関しては、調べたら比較的簡単に分かりました。というのもSQBOというカタログ番号のプレフィックスというか4文字が付くレコードがいくつか有るんですね。例えばSteppenwolfの「LIVE」(SQBO-93170)とか、James Brownの 「Revolution Of The Mind」(SQBO 94254)とかがそれです。前者のオリジナルはDunhill ‎– DSD50075で後者はPolydor ‎– PD 3003です。ということで、今回のFillmoreのSQBO盤も同様にCapitol Record Clubで取り扱われたメール・オーダー仕様のアルバムであるということが判明しました。

 ちなみにCapitol Record Clubはレコード・コレクターの間ではビートルズで有名ですが、元々キャピトル・レコードのメール・オーダーの通販部門でしたが、後に他社のアルバムも扱うようになりました。さらに1968年以降は販売権が同じく通販レコード会社のLongines Symphonette Societyに移りました。Fillmoreの通信仕様はRCA(Record Club Of America)が一番ポピュラーなのですが、ここからも出ていたんですね。知らなかったなあ。

 ということで、Hさん、大変遅くなりましたが(遅すぎですよね)、貴重な資料ありがとうございました。しかし当時本当にFillmoreというのはどれだけ売れたんだろうか、と思えてなりません。

(2015.10.03)