ジャケット写真の謎
全くお騒がせな(?)Quadジャケットがことの発端です。文字ありがオリジナル? 無しがオリジナル? というお話です。
なぜアルバム・タイトルが無い?! 人騒がせなQuad盤ジャケット
Quad盤(4ch盤)に数々ある謎(おおげさですが)の中で、個人的に不思議だったのがこの一件です。何あろう、アルバム・タイトルが消されているのですよ! すわ、一大事! ひょっとしたらQuad盤の写真がオリジナルで、タイトル文字は後から焼き込まれたのかもしれない?! なんて考えだすと夜も眠れなくなってしまうありさま(嘘付け!)。
上の写真は、左がオリジナル、右がQuad盤ですが、あなたはどちらがオリジナル写真だと思いますか? タイトル無しがQuad盤だけだとしたら、タイトル文字を何らかの意図で消したということになります。しかしQuad盤だけという確証はありません。そういった憶測をあざ笑うかのように、さまざまなタイトルなしがこれまた目の前に現れてくるものだから…。
なんとも恨めしいタイトルなし写真の数々
▼レコード・コレクターズ誌の写真
←これまたあるべき文字が写っていない「何じゃこりゃ?」的な写真なのですが、2006年9月号のレコード・コレクターズ誌(Fillmore資料室で紹介済み)の特集の扉ページのモノクロ写真です。
このオリジナルがモノクロ写真だとしたら、またも別テイクの写真(Fillmore写真館参照)が発見されたのか?! と個人的に色めき立ってしまいました。おまけにこの写真の左上に「アルバム・カヴァーとは別ショット」と嫌らしいキャプションが焼き込まれているじゃありませんか。確信犯ならどんな別ショットなのか教えてほしい!!! しかしこの写真どこかで見覚えが…。
しょうがないので、ただただ写真を集める日々が続きました。最後はあの手この手を使ってひたすら検証です
▼これ、デラックスエディションに入っていた写真
←さっきのレコ・コレの写真とどこかで見たぞー、と思っていたら、ありましたありました。2003年のデラックスエディションに使われていたカラー写真です。ところで、良く似ていますが「The Fillmore Concerts」のカラージャケットとは違います(Fillmore写真館参照)。
というわけで確認のために画像編集ソフトを使って、この写真とレコ・コレのモノクロ写真を重ねあわせたらぴったり! ただし、左上のタイトル文字が欠けている。うーん、これを修正して使用したのか、それとも本当にタイトルなしの写真が実在するのか? ますますもって謎が深まります。
▼タイトルなしカラー写真みーつけた!
←さてはて、こんなことで無駄に時間を費やしていたある日、デラックスエディションとまったく同じ写真の3枚組のボックスものをeBayで発見。馬鹿ですね、さっさと落札してしまいました。
これは検証するまでもないでしょう。トリミングの差こそあれ、左のデラックスエディションの写真と全く同じものです。ただし、こっちには左上・機材ケースにタイトルの文字が無い。
ということはレコ・コレに使用された写真は、この箱の写真を使ったのでしょうか? その辺は定かではありませんが、写真を縦長に使っているところを見ると、まんざらではない気がしてきました。違ったらごめんなさい。
▼タイトル以外にもあるべきものが無い!
ところが、上の写真にはこれまでない変化が見られました。確かにQuad盤のジャケット同様、機材ケースにタイトルの文字が無いのは同じなのですが、それ以外のものも無いのです。またまたヘンテコなことが起きました。それはどのケースにも小さな文字で書かれているはずの「FRAGILE ALLMAN BROS.」と言う文字とケースの通し番号である「7」と言う字が、左上のケースから消えているのです。
Quad盤には「FRAGILE ALLMAN BROS. 7」の文字が。
デラックスエディションにも「FRAGILE ALLMAN BROS. 7」の文字が。
ところがボックス盤(3枚組クロニクル)にはその文字が無い!
上の3枚の写真を比較していただくとすぐに分かることですが、3枚組クロニクルのそれは、明らかに全部消してしまったということでしょう。もともとタイトル文字がオリジナルに無ければ、わざわざQuad盤には「FRAGILE ALLMAN BROS. 7」の文字を消す必要はありません。
ということで、カラー写真に関して言えば、タイトル文字は元々からあったと考えても良いのではないでしょうか。
そもそもこの3枚組クロニクルという企画ボックスものは、1st.・
2nd・そしてFillmoreのセットですから、箱のタイトルがFillmoreのままではおかしいと考えて、Fillmoreのタイトル文字を消したと考えても間違いではないでしょう。
とすると、モノクロのQuad盤の写真はどうなのか。カメラの持ち替えこそあれ、まさかラーとモノクロでシュチュエーションを変える意味がどこにあるのか。ましてニューオリンズへロードに出る直前という撮影のタイミングを考えたら、そんな時間はなかったはずです。モノクロもカラー同様と考えても良いのでは無いでしょうか?
やれやれ、と言う結末です。事実は意外とあっけなく向こうからやってきました
6cm×6cm、あるいは8cm×8cmかもしれません。連続して撮影されたネガの紙焼きがずらり。うーん、こんなの見たこと無い…。そして、どのカットにもタイトル文字が機材ケースに書かれている。これはもう決まりだなあ。でもこの写真の出何処はどこなんだろうと思っていたら、ある日NJの友人Jさんからメールが。
「Fillmoreの写真を撮ったJim Marshallの写真集がでていますよ」。そりゃ、知らなかった。さっそくamazonで購入したところ、ありましたありました、この写真。撮影した本人しか持っていないはずのネガ起こしのものですから、当然といえば当然でした。そんなわけで、この写真集にはものすごく短いコメントですが、Fillmoreの写真撮影についての話が、写真に添えられていたのです。まるでそれは自分にとって、手品の種明かしのようでもありました。
左下の文章を簡単に訳すとこんなことが書いてあります。
The Allman Brothers Bandが大ブレイクしたアルバム"At Fillmore East"には一枚もFillmore Eastでの写真は使われていない。内側の写真はWhisky A Go-GoやFillmore Westでのものだし、有名なアルバムジャケットに至ってはMarhallはジョージアのカプリコーン本社で撮影した。かれは自分で機材の箱にステンシルで文字を描いたのだ。Marsahllは言う。「私は彼らの笑顔が撮りたかったから、撮影の時に彼らにこう言ったのさ。“言うことを聞かないとコカインを誰にもあげないぞ”ってね」
そうか、そうだったのか、というような話です。種明かしはこれにておしまい。長い年月にわたって、あーでもないこーでもないと考えてきたのですが、資料を揃えて裏を取って行くと、まあ以外こんなものなのでしょう。
ところで後からこんな写真が有ったことを思い出しました。例のデラックス・エディションのジャケットを開いたところにある写真です。ステンシルを使いスプレーで文字を吹き付けた周囲が白く縁取られています。
そういえばジャケットの写真もそんな風になっています。よく見れば文字が無いもの写真のも縁取りだけは残っています。やれやれ、これで一件落着です。文字が有るのがオリジナル写真でした。
結論 : ということで、ジャケット写真に於けるタイトル文字の謎は「有る方がオリジナル」でした。一件落着!
補足 : こんなのも見つかりました(2008.07.05)
▼8trテープのラベル写真
←8トラックのテープにも4chバージョンはあって(それはまた改めて取り上げる予定ですが)、もちろんそのテープのラベルの写真にはタイトル文字は無くて当然なのですが、改めてがさごそと10本ぐらい有る8トラ・テープを調べたら、これまた有るんですねー。何でそんなことになるのか知りませんが、有るんだから仕方が無い(笑)。何の目的で? どういう魂胆で? こんな人騒がせなことをするのでしょう? まあ、そんなに大げさなことではないにしても、思わせぶりですね。まさか内容が4chバージョンでは? と確認しましたが、そんなはずもなく普通の内容でした。これまた普通の人にはどうでも良いことなんですけども。
▼オープン・リール・テープの箱の写真
←オープン・リールのテープにも2本組みの4chバージョンがあります。そのテープのジャケットというか箱の上蓋の写真は、まったくLPのQuad盤と同じものが使われています。そんなわけでタイトル文字は無くて当然ですが、厄介なのは曲順がジャケット裏のクレジット通りではなく、オリジナル・ピンク盤の盤面順に収録されていることです。ややこしい話なのですが、LPの場合にはディスク1の表がSIDE 1、裏がSIDE 4、ディスク2の表にSIDE 2、裏にSIDE 3が収まっています。従ってテープ1にSIDE 1、SIDE 4が、テープ2にSIDE 2、裏にSIDE 3が収録されているので、ラストの曲がHot 'Lantaなのです。まあ、どうでもいいことですけど。
補足2 : 現物が残っていました。いやービックリ!!! (2008.10.07)
▼The Big Houseのホームページで見つけました!
The Big Houseというのは、デュアン、ベリー、グレッグの3家族が1970年1月から72年11月まで故郷のメイコンで共同で住んでいた家のことを言います。今ではThe Allman Brothers Band Museumとして公開されています。このホームページでグレッグをはじめとして関係者のインタビュー映像が見られるのですが(2016年現在は残念ながら見られません)、なんとその後にちらっと見えるのが、件のレコードタイトル入りのツアーケースではないですか! いやー、そこまでは見ていなかったもんなあ。ちゃんとケースの上にFillmoreのジャケットも乗っかっているので、これは間違いないでしょう。
▼The Big Houseのホームページにはこんな写真も!
あんなに悩んでいたのに、なんだ、やっぱりねー。有るべきところには有ったんですね。同じホームページの中に写真集のコーナーが有るのですが、その中にもこんな写真が有りました。これは衆議院議員さんのようです。
"The Big House Foundation 2005 Summer Tour"というイベントでのスナップのようですが、この人(Mr. Jeff Mullis)がどんな役割を果たしたのか残念ながら分かりません。
それはどうでもいいですが、これは絶対に行かねばなるまい。死ぬまでにThe Big House に行くぞー!
補足3 : その後に入手したThe Big Houseで撮影された現存するツアーケースの現物写真 (2015.09.29)
補足4 : 最近のThe Big Houseのホームページで紹介されている写真にもツアーケースが写っていました (2016.01.12)
▼実はツアーケースはThe Big House Museumの「Fillmore East Room」に壁面に飾ってありました。
上の写真はThe Big House Museum(http://www.thebighousemuseum.com/museum-tour/)より拝借しています 最近のThe Big Houseの充実ぶりは目に見張るものがありますね。2014年10月号の『レココレ』誌で編集部に取材して頂いた時からはや1年半が過ぎていますが、その時点ではThe Big Houseのホームページにもあまり室内の紹介写真がありませんでした。 現在のホームページにはMuseumには色々な展示物が、色々な部屋にわけて展示されていいる様子が紹介されています。詳しくはThe Big House Museumのホームページを見て頂くのが手っ取り早いですが、デュアンの寝室やベリー・オークレーの娘の子供部屋まで再現してあります。
で、肝心のツアーケースですが、2014年8月の時点では上の段の写真しか手に入らなかったので良くわからなかったのですが、実は実際には右の写真のように壁面の上部の棚に飾られていることが分かりました。上の写真もよく見れば棚の上に載っているのを見上げて撮影してもらったということが分かりますね。ちなみに上の写真はネット上ではここでしか見られないはずです。
こういう写真を見ると、ぜひとも足を運びたくなります。そして日本にもこんなお馬鹿さんがいることを直接伝えたいですね。